大塚さんへ捧ぐ、滅法赤鬼の図。

男は身の丈は熊ほど、赤い肌に鋭い犬歯。
取分け、剃刀の様な角が目を引く。
「へぇ、東洋の古代神を探しての旅か」
男は手にした瓢箪を時折回しながら、既にほろ酔い加減の顔で出雲に話しかけている。
「この辺りに今も生きている古代の神々がいると聞いてきたのですが、戦乱の最中とは知りませんでした」
怖気づく事もなく、出雲は男に話しかける。
「そりゃぁそうだろ。戦争やるなんて事表沙汰にはできゃしねぇよ。」
「確かに・・・」
「それが証拠にだ、ならず者も逸れ者も皆この国に紛れ込んできやがった。俺もな、有角族じゃねぇ。南の辺りから来た民族・・・盗賊さ」
男の口から、盗賊、という言葉を聞いて狼狽する出雲。
それを見て、阿ヶ大笑。
「おっと悪ぃ、兄ちゃんも襲われたクチか?ここら辺の奴等はマナーってもんが無いからな。戦場漁って、武具奪って売りさばくってな。
表向きは愛想のいい商人なんだから嫌になっちまう
俺はちょいと違うんだがーー酔いが周り過ぎてうまく喋れねえ」
とは言ったものの、その後男は酒も手伝って景気よく喋り始めた。
南方の島々に、有角族とも違う民がいること。
赤い体をしている事から「鬼」という名前をつけられたこと。
立て掛けてあるのは剣ではなく、重さ雄牛ほどの金砕棒であること。

取り留めの無い会話を続けているうち。
月が昴と重なり、愈々夜が濃くなってきた。
「いいもんだなこの国は。俺は故郷の事何もしらねぇからよ、こんな夜空も初めてなんだよな・・・それよりも知ってるか?皇女様を」
男は窓の向こうをしゃくって見せた。
「皇女?」
「この国の皇女さ。何でも戦乱が嫌で、毎日のように家出を繰り返してはお前さんの目指している森に入浸っているとかな――――まぁ、そんなん嘘だろ」
又大笑い。
月が草を照らし、風が葉を揺らす夜。話をした瞬間、ざらついた様な風が窓から二人の頬を撫でた。
「血の匂い・・・?」
「ああ、それも随分いい飯食ってる奴のだな」

ツノ分補給になると良いのですが・・・

赤鬼:名前は未だない(コラッ。風来坊であり、優れた戦士であり、野蛮であって高貴でもある。
一括りに鬼が汚い獰猛な種族だという俗なイメージを払拭したいな、
と思い当初の盗賊や傭兵といった職業からは遠ざかる存在になりました。
金砕棒:かなさいぼう、と読みます。江戸時代に捕り物の道具として使われ、
「往生要集」の地獄の記述に出て来る極卒もこの武器を持って罪人を責め立てています
(それだけではなく剣や鞭、槍、斧などをもっている場合もあります)。
絵を見手から様々なイメージを描いて見ましたがやはり「豪快で力強い」印象を受ける金砕棒は欠かせない要素ですね。
包んであるのは草を編んだ布です。
服装について:最初絵をペン入れしたときはかなり整った服を着ていて、これじゃ一寸なと思い、南方の民族らしく赤、橙、
黄、茶の4色を使い、アクセントとして緑色の合せ糸を描きました。
でもアロハシャツのように見えんでもないですねw
青鬼:当初は「赤い肌を持つ南方の民族」としよう、としたのですが、
この青もなかなかいい感じですねw冷静で皮肉屋で服装も綺麗、正に天邪鬼。
水浴びながら「赤は山岳陸上部族(盗賊)、青は漁業&商船(という名の海賊)民族」と思っています。
そのうち青も描いてみようかなと。

戻る